肩凝りが治らない

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ルフィと同じくらい歌舞伎も自由だった【ワンピース歌舞伎感想】

こんにちは。

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初の新橋演舞場、そしてワンピース歌舞伎を観劇してきました。

チケットは友人にいただいたものだったんですが、ワンピースが歌舞伎になると知ったときに興味はあって。原作の漫画が元々好きで、アニメや漫画の実写化は否定的な意見を持ちがちなこともありますが、ワンピースにはそれはなくて。USJで毎年ショーをやっていたり、既に色々展開されてますからね。なので歌舞伎で上演されると知った時にもゴム人間とかナミさんやロビンちゃん、セリフは歌舞伎調なのか…などなど、どういう風に見せるんだろうと興味がわくことばかりでした。

歌舞伎自体に触れたのは今回が二度目。一度目は学生の頃に歌舞伎座で年末の大歌舞伎を観たことでした。あの時はいわゆる”歌舞伎”で音声ガイドを借りないとストーリーが分からない、でも動きが派手だったり見得がかっこよかったりで楽しめました。それが今回はワンピース。事前にHPを見てどこのストーリーをやるのか確認したらマリンフォード…!エース奪還までの流れをやると…。想像だけで泣けるシーンだらけだぞ、そしてかなり大掛かりな演出が必要だぞ、と色々な気持ちで震える思いで新橋演舞場へつきました。

泣きそうな気持はとりあえず置いておいて、まず空間を楽しむために劇場の外でお弁当を購入。11時からの上演だったので、一幕と二幕の間に食べようと思いまして。

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海賊弁当を買いました!肉だらけ!全部骨付き!こんなところからも原作愛がいっぱいで嬉しくなります。

お弁当を売っているおじちゃんがおもしろくて、「海賊弁当お願いします」「はい、海賊ちゃんね~」と。全然堅苦しくないね、歌舞伎!(なんか違う)

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この中心にいるエース見るだけで泣けてきますよ。グッズでエースとルフィのブロマイドセットが売り切れていました。うん、みんなエース好きだよね。残念。

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ステージ上にはルフィがどーんとお出迎え!

実はこのルフィはどーんとお出迎えしてくれるだけにいるわけではなく、上演開始後に大きな役割があります。ここの照明とか映像との組み合わせとか、物語の導入部分がうまくて、原作ファンは冒頭でいきなりぐっとくる演出がされてます。映像と実写を組み合わせたかっこいい舞台なんですよワンピース歌舞伎。

細かいネタバレはしない程度にワンピース歌舞伎で感じた魅力を挙げていきますね。(だいぶ個人的な感想です)

 

▽ナミさんとロビンちゃん

歌舞伎でやると聞いて最初に持った疑問のナミさんとロビンちゃんはどうするんだろう?というもの。歌舞伎は全員ステージ上にいるのは男性なわけで、その中で女方が存在して女性を演じるのはもちろん知っています。でもナミさんは原作ではビキニ姿が多く、ロビンちゃんもグラマラスな女性。衣装もセリフ回しもナミさんが一番歌舞伎らしかったように思います。でも違和感は無いです。たぶんワンピース自体、今まで扉絵などで色々な衣装の一味を尾田先生が描かれてるんですよ。その中でナミさんの着物姿も見たことがあったので、そのパターンのナミさんね!とすぐ頭の中で結びついて、特に違和感無し。ロビンちゃんもロビンちゃんでした(語彙力が無い)。女方の二人は所作も女性なんですけど、声がキレイ!これです。キレイな声で何より丁寧なんですよ。ナミさん役の市川春猿さんがプログラムで”コスプレショーにしてはいけない”とおっしゃっていて、実写化の成功の鍵って原作に対する誠意と愛が必要だよなと改めて思いました。演じるキャラクターのことを考えて考えて考えて、そうして演じないと原作ファンが納得するものはできないだろうし、新しいファンも取り込めないと思うんです。とはいえ、ナミさんとサンダーソニアの二役を演じる市川春猿さん。サンダーソニアもめっちゃそっくりでしたよ。ロビンちゃんはマリーゴールドも演じてます。こちらはロビンちゃんと違ってちょっと男らしい。戦士なので、その辺の二役の違いも楽しいです。

 

▽ゴム人間

ワイドショーでもやってましたね。ゴム人間の演出が黒子を使って腕をつなげて伸ばしているように見せるというもの。テレビで一度見ていましたが実際舞台の流れで見るとまた圧巻でしたよ。「おお!」って思わず言います。素直に腕が伸びているように見えるものだなと思いました。後ろに横に黒子の方がずらずら並んでいるのに、それも見えているのに、腕が伸びた!って思います。なんなんでしょうね、あの感覚。おもしろいです。漫画の、特に悪魔の実のぶっ飛んでる演出も歌舞伎にかかるとそれに”見えるようになる”のがすごいと思いました。あとルフィで歌舞伎らしかったのが「ギアセカンド」を「ギア二段目」と言っていたところですね。そういう流せて聞けちゃうところに歌舞伎を持ってくるのはずるいなぁ。サブリミナル歌舞伎ですよ。ちょっとずつ歌舞伎要素も入れられて、慣れてきたところに白ひげの大立ち回りをやるのがね。かっこいいんだ、親父がまた。

 

▽イケメン枠

サンジとイナズマの二役をやっている中村隼人さんがイケメン枠です。どちらもかっこいいです。サンジくんとしての足技もかっこいいしイナズマでの二刀流の殺陣もかっこいい。イナズマはチョキチョキの実の能力者なので、両手がハサミになるんですが、歌舞伎のイナズマは二刀流です。この工夫もおもしろくて両手に持った刀をクロスしてひとつのハサミに見せてくれるんです。原作を知らない方は二刀流の殺陣をそのまま楽しむのだろうし原作を知っている方はその工夫に気づいて「おおっ」となります。細かいところで原作に寄せてくるところが愛があって嬉しくなります。

イナズマの時の水の演出、これがまた迫力なんですが。なるべく客席に水をかぶせようと動いているところがわたしは2階席だったので上から見ていて楽しくなりました。回るときに服の裾の水を飛ばそうとしているな、とか。客席の前の方には水を防ぐシートのような?ものが配られていたみたいでみなさんそれをかけて水をブロックしていたんですが、フェイントかけて水を客席にかけようとしていたり、舞台上と客席の攻防戦も楽しかったです。ずぶ濡れ状態で戦う演者さんたちかっこいいです。

 

▽ゾロとボン・クレー(とスクアード)

嘘でしょ!?と思いました。二幕と三幕の間にプログラムを見て、ゾロとボンちゃんが同じ演者・坂東巳之助さんとはぜんっぜん気づかなかったです。だって、ゾロが出てきて「おう!」ってセリフ言っただけでゾロだ!って分かった方が「あちしよぅ!」とか言ってオカマやってるなんて思わないじゃないですか!しかもボンちゃんも声そっくりだった…あと動きもボンちゃんそのものだった…本物のボンちゃんだった(なんか複雑)

表情もボンちゃんなんですよ。シャボンディでバラバラになってからマリンフォード終わるまで麦わらの一味は再会しないので、そうなるとゾロよりボンちゃんの方が長いんですよね。で、散々ボンちゃん見て最後麦わらの一味出てきて、ゾロ!と思ったら最後の最後にカーテンコールでボンちゃんの衣装(囚人服)着たゾロで出てきたんですよ!ずるい!ゾロの顔でにこにこ手振ってて、そんなことゾロのキャラ的にありえないからボンちゃんじゃん。それボンちゃんの能力でのゾロじゃん!って。それぐらいゾロとボンちゃんが同居するくらいどちらも本物だったんです。で、スクアードがまた全然違う人に見えるから演じ分けすごいなぁ、と。語彙力貧相で申し訳ないんですけど、すごいもの見たときに「すごい」以外の感想出てこないものですね。

 

▽ルフィとハンコック

このふたりを同じ人が演じるというのは不可能じゃないのかなと思うほど一緒にいるシーンが多いですよね。市川猿之助さんの早替えもすごいし、一瞬で早替えをするということは一瞬でキャラクターも変わるのでその切り替えもあるんですよね。まったくの別人でした。ルフィは白塗りはしているもののしゃべり方は現代劇です。なんなら結構早口です。そこで子供っぽさを表しているのかなと思いました。ワンピースを知らない方向けに分かりやすくそう演じているのかなぁ、と。一方でルフィは物語の語り部的な役割を果たしているところもあるので、原作とちょいちょいセリフが変わったりしているんですよね。説明的なセリフになっていたり。ワンピースの話を知らないご婦人でもなんとなくの流れが分かるようになんでエースを奪還したいのか、そもそもエースと自分はどういう関係かなど、大まかにルフィが説明してくれます。それとハンコック。ハンコックの衣装が派手で楽しいですよ。ちゃんと見下すポーズもやってくれますし、メロメロもやってくれます。石になるところまでちゃんと再現してくれるんですよ楽しい!ハンコックは女性ですし、ルフィと全然しゃべり方も変わるのでもしかしたらルフィとハンコックやってる人同じなことに最後まで気づかない方いるかもしれない…というくらい別人。

演者側に男性しかいない歌舞伎の世界で、女性しかいない島・女ヶ島を表現するというところがまずおもしろいですよね。

 

▽エースとルフィ

エース役が歌舞伎役者ではないんです。福士誠治さん演じるエースがですね、かっこいい!声聞いてかっこいいし、立ち姿もかっこいいし。エースって正直そんなに二枚目キャラではないと思うんですけど、でもエースは生き様からなにからかっこいいのでかっこいい人が演じないとだめなキャラなんですよ(と、勝手に思っています)。炎が出る演出もかっこよくて。そして、エースとルフィの対比がよかった。エースは歌舞伎らしいメイクもなくセリフも原作そのまま。ルフィは白塗りなど見た目は歌舞伎、セリフは現代劇。そんな二人が共闘するシーンで、エースは現代劇の殺陣でルフィは歌舞伎の立ち回りをしていて、二人でポーズをきめるところでは見得を切る。その交わったり離れたり、また交わったり…違和感が無いんですよね、不思議と。歌舞伎ってすごい。

それでまたずるいのがエースのセリフと動き。エースの最期ですよね、「愛してくれてありがとう」までの流れがセリフだけじゃなく、動きまでもが原作を完全再現です。ここ変えないでくれて嬉しかったのと同時に、エースのセリフを原作のコマ通りに福士さんが進めていくので、ひとことずつに涙がこみ上げてきて、最期の瞬間に全部溢れるという。完璧でした。あのシーン、思い出してもまだ泣ける。

 

▽歌舞伎って自由

全然堅苦しくなかった。むしろ色々なものが融合していて、スクリーンを使って映画のようでもあったし、歌舞伎ならでは!というシーンもあったし、現代劇の要素もあったし、ライブの盛り上がりもあったし…全部の要素がちゃんと共存してました。ワンピースの世界観は技だったりはCG使わないとできないよーと思っていたことが意外とアナログでいけるんだというものがあったり、マリンフォード行くまでのフライングからのライブがとても楽しくて。まさか新橋演舞場でスタンディングで手をたたいたり歌を口ずさんだり演者さんに手を振ったりするようなことになるとは思ってませんでした。これは体感しないと伝わらない楽しさなんですよ、残念ながら。

登場シーンで拍手していいのも歌舞伎ならではだと思いました。普通の舞台だと終わりの拍手はあっても途中途中であんなに拍手することはないので、盛り上がるシーンで盛り上がっていいんだ!というのは客席側もなかなか快感です。

演出も派手なものもたくさんあります。でも、この装置初めて見た!というような最新の技術バリバリというわけではないんです。どれもこれも見たことあるような仕掛けの見たことない使い方なんです。中でも「なるほど」と思ったのが青キジの能力。周囲を凍らせる能力をどう表現するのかと思ったら大量の紙吹雪!2階席まで紙吹雪まみれになるほど吹き荒れましたよ。紙吹雪の演出自体は珍しいものじゃないですけど、あれだけの量を撒き散らすとあたり一面氷かな?と思わせられるものになるんですね。なんでもやったもん勝ちだなと思いました。そんな青キジがはけるときに「なんじゃこりゃぁ!」と言うのクスっとしてしまいました。青キジのモデルとなったのが松田優作さんだというのを知っている原作ファンが思わず笑ってしまう小ネタでした。

 

今挙げた以上に、どの瞬間も魅力的でしたワンピース歌舞伎。

歌舞伎のイメージってどんなんだったっけ?と分からなくなるほど、むずかしさは一切なく、誰にでも笑って泣けて楽しめるエンターテインメントでした。決してコスプレショーではないですが、見た目もキャラに寄せつつそれでも歌舞伎らしさは失わず、絶妙なバランスです。これしかない、と思うくらい。

伝統芸能の新しい挑戦、かっこいいです!ぜひ!