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映画「屍者の帝国」感想

こんにちは。

”Project Itoh”の第一弾となる「屍者の帝国」を見てきました。

原作を読まないで映画を見に行ったので、あくまで映画の内容のみの感想になります。原作とはキャラの関係性が微妙に違うところもあるようなので、原作ファンの方には何言ってんだ?という方向に飛ぶかもしれません。

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映画を見た後にもっと詳しく世界観に浸りたくて原作を購入しました。

ラストシーンをどう解釈すればいいのか、迷ったこともあって原作で補完できるのならなんでもいいから自分を納得させるだけの情報がとにかく欲しい、と思ったからでもあります。

ここから先はネタバレになりますので、これから映画を見る予定の方はご注意下さい。

 


「屍者の帝国」劇場本予告 - YouTube

まずわたしは今回の”Project Itoh”の主役でもある伊藤計劃という作家を知りませんでした。PSYCHO-PASSを見ている最中に流れるCMだったり、PSYCHO-PASSの朗読劇会場で見たPVをきっかけに興味を持ちました。前情報はPVで得たものだけがほとんどでした。ワトソンというとシャーロック・ホームズの登場人物でPVを見た感じスチームパンクの世界観なのかな。印象は大体それくらいでした。

見終わった直後の感想がこれでした。

技術の進歩・進化が戦争と共にあるのか、人間が研究して開拓した新しい技術が戦争に使われるのか紙一重なところだとは思いますが。最初は大切な人を蘇らせたい、もう一度話がしたい、というワトソンがフライデーを前に思う気持ちと同じだったかもしれないことが、生きている人間のために死んだ人間を使おう、兵士として送り込もう、とにかく量産が必要だ、となっていくともう何がメインなのか当初の研究者の思いはなんだったのか…。

今の医療の進歩やそれに携わる方を批判する気持ちは一切ないですが、屍者を作るより死なない人間を生み出す方が早そうだなという気はしています。それも一歩間違えれば屈強な兵士として作られる人間が出てくるんじゃないか…SFですけどね。

でも親友を亡くして、二人で行っていた研究の証明をするために自分を使えと言ったフライデーの死体に21グラムの代わりとなる魂を入れ、ザ・ワンのように心を持つ屍体になるように求めたワトソンの気持ちも分かる。そのせいで世界が混乱する結果になることも想像はつきます。世界全体を見たら倫理的にどうなの?と思うかもしれませんが一番近かった関係の人間を蘇らせることは罪には思わないかもしれません、わたしだったら。

生きた人間に魂をインストールしたらどうなるかというニコライを使った実証が、この映画の中で一番驚いて一番ショックでした。まったくの不意打ちだったので。ですが、このシーンもラストのメリーバッドエンドとも見えるようなワトソンとフライデーのシーンにつながるのかな、と思うと必要な痛みでした。んんんん、でも辛いものは辛い。その後のニコライとカラマーゾフの食卓シーン。これもこわい。もう二人とも屍者であるのに生前の行動がインストールされているのかなんなのか同じようにワインを飲み本を読む、魂の無い屍体。

やっぱり大事なものは入れ物じゃなくてその人の魂なんだ。とも言い切れないのが機械人形であるハダリーの存在です。「魂の実感」を欲する彼女がいることで、入れ物なんて関係ない心さえあれば!とか、生きている人間が機械よりも優れている、ともはっきり言えないような絶妙な距離を生み出しています。この辺の曖昧さ、一方向からだけで物語を捉えられないようなキャラクターの配置をしているところがうまいと思ったところで、その世界観に引き込まれた原因でもありました。

これはラストシーンで感じたこと。

あれだけのことをした原因が自分にあるから止めたいと言ったワトソンが、今さら逃げることはないと思うんですね。だとしたら残ってるのは「魂の証明」の仕上げに自分を使うことしかないかな、と。ワトソンは別の魂をインストールして成功した結果、別人として新しい相棒であるホームズと過ごすようになったのかもしれないし、呟いたようにフライデーが意識の上書きだけでワトソンを苦しみと責任から救おうとしたのかもしれない。後者の方がずいぶんロマンチックにはなっちゃいますが、どちらかであってほしいというのが、感想通り越してわたしの願いです(そうじゃないとこの話重くて)。

 

物語の大筋とはさほど関係ないですが日本で研究していた屍者は生きている人間に細菌を打って生物兵器として使おうとしていた、というやつ。時代は少しズレると思いますが731部隊を示唆しているように感じました。(だからどうということもないのですが、日本のことだからかSFであってもやけにリアルに感じられました)